オニテンの読書会

文化・民俗や、オススメ本の紹介、思ったことも書きます。

同性愛への嫌悪、そしてそれは如何に表現されるのか。『同性愛嫌悪を知る辞典』ーオススメの本の紹介ですー

 世界には様々な憎悪、嫌悪が渦巻いています。外国人に対する嫌悪(xenophobia、ゼノフォビア)、女性に対する嫌悪(misogyny、ミソジニー)、そして、同性愛に対する嫌悪(homophobia、ホモフォビア)など、問題が顕在化されるにともない、「人の嫌悪感」についての研究が盛んになってきました。

 今回の記事では、同性愛者に対する嫌悪、そしてそれが如何に表現されるのかについて詳細にまとめられた『同性愛嫌悪を知る辞典』をご紹介したいと思います。

〈同性愛嫌悪(ホモフォビア)〉を知る事典

〈同性愛嫌悪(ホモフォビア)〉を知る事典

 

  この本は、現在約19,000円となっています。非常に高価な本ですが、市町村の図書館や、大学図書館には所蔵されていると思いますので、ぜひ、図書館に足を運んで読んでいただきたいと思います。非常に興味深く、かつ、人間の嫌悪という感情についても考えさせられる本となっています。

【目次】

 

 

 

・この辞典の視座

 現在では、人々が同性愛に対して寛容になり、同性愛者が自由に生きていけるようになったという見解が広く流布されています。しかし、アメリカではトランプ政権発足を発端に同性愛者に対するヘイトクライムが急増、日本においても一橋大学で同性愛者であることをアウティングされ、自殺に至る事件が起こっており、まだまだLGBTに対する理解が進んでいるとは言えない状況にあります。

 この『同性愛嫌悪を知る辞典』では、同性愛嫌悪を、身体的、精神的、象徴的暴力の総体であると定義します。同性愛嫌悪は、人類が抱える深刻で複雑な問題であり、深く考察するべきであると提言します。そして、その嫌悪と戦うためには、真の原因をつきとめ、その嫌悪が如何に日常的に表現されているかを分析する必要があるとするのです。

 

・いかに同性愛嫌悪は日常に紛れ込んでいるのか?ー嫌悪を知ることからー

 テレビなどにみられる《表現》に対して、「これは嫌悪、差別ではないか?」と声をあげると、決まって「それは言いがかりではないか!」という意見があります(とんねるずの保毛尾田問題、ダウンタウンの黒塗り問題など)。その炎上の背後には、笑いへと昇華することを目的としているものであっても、人々の嫌悪を惹起する危険性がないと言い切れない現状があるのではないでしょうか。わたし自身、お笑いが大好きですし、どこからどこまでが許容されるのか、また、避けるべきなのかは、非常に難しいと感じています。しかし、こうした状況だからこそ、ただ避けるのではなく、いかに人間の差別心や嫌悪が表現されているのかを知り、マイノリティへの理解を深める必要があるのではないでしょうか。

 この辞典には、そうしたテレビなどにみられる表現が文章だけでなく、写真やイラストによって詳細に解説されています。

 

・項目「広告」(230-234頁)をみてみましょう!

 この辞典で、とても興味深かった項目「広告」を、みてみましょう。

 まず、広告は、経済的対象であり、できるだけ多くの消費者を引きつけることが目的となっていることから、異性愛主義的なイデオロギーを表出する特性を持ちます。

 そして、ヨーロッパ社会においては、広告における嫌悪の表出は三つの時期に分けることができるとしています。

 まず、❶広告の開始から1950年代まで、❷1960年代から1990年代まで、そして❸1994年から現在まで、の三時代区分です。とりわけ興味深いのは、❷の時期での、同性愛者の描かれ方です。

 ❶1950年代までは、同性愛は否定され、タブーとして隠されていたとします。

 ❷1960〜1990年代までの期間には、同性愛はカリカチュアされる事になります。

 ❸1994年から現在まで、同性愛は物象化されているといいます。

❶の時期には、広告は、同性愛を暗に意味するようにキャッチコピーやイラスト用いて、人々の関心を引こうとするのです。

❷の時期は、より直接的に同性愛者が描かれる事になりますが、同性愛者は、決まって風刺や滑稽な役割を担うことになります。同性愛者は、「奇形」として描写され、人々はそれを面白がると同時に、驚嘆することになります。同性愛者は、滑稽で感じのいい道化を演じるか、だまし絵および間違いといったパターンの物語的図式の中に現れます。そして、同性愛者は異常、病的なものの領域に追いやられていくのです。そこで独創性を追い求める広告業者は、同性愛者の「異常性」に対する言説を利用しようと画策するのです。

❸の時期には、同性愛者自身も消費者として考えられるとともに、同性愛のイメージをより性的に表現する「セクシュアリティの過剰」の状態であるといいます。とりわけ、レズビアンは、異性愛主義的観点から過度に官能的に描かれる事になるのです。

 

 こうした、広告の傾向は、西欧の広告から例証されていますが、日本にも共通するものがあるのではないでしょうか。

 

また、この辞典には、日本についての考察も巻末に載っており、とても興味深いものとなっています。台湾やオーストラリアでも同性婚が認められるようになり、日本でも議論が活発になってきています。こうした時勢の中で、同性愛に向けられた/向けられる嫌悪について、この辞典を通して学んでみてはいかがでしょうか?

 

〈同性愛嫌悪(ホモフォビア)〉を知る事典

〈同性愛嫌悪(ホモフォビア)〉を知る事典

 

 

 

 

読者の方を大募集しております。興味を持っていただけた方は、是非、下のボタンをポッチッと押してくださると嬉しいです!!

↓↓↓↓↓↓

↑↑↑↑↑↑