オニテンの読書会

文化・民俗や、オススメ本の紹介、思ったことも書きます。

英検専門塾経営者として、英語民間試験導入延期について思うこと。

 2019年11月1日、大学入学共通テストに導入される予定であった英語民間試験の実施が延期されました。英語民間試験の導入は、経済的/地域的格差だけでなく、試験そのものの差異も問題となっていました。今回の記事では、英検専門塾の経営者として今回の導入延期について、考えたことを書いていきます。

 

 

 

わたしの立場、塾経営について

 まず、わたしは英語民間試験の導入に反対です。そんな、わたしが英検専門塾を開いた理由は、経済的/地域的格差の問題を少しでも解決したいという思いからでした。なので、できるだけ田舎で、できるだけ安く、できるだけ短く、英検を取得してもらおうと、2年前に塾を開き、質問・補講・面接練習も無料、月1万円で英検準1級まで、中学生の希望者には5教科も教えています。もちろん、入学金、施設管理は無料です。

 今回の延期決定から、英語民間試験導入が廃止となった場合、わたしの塾は閉校か、大学受験専門の塾にするか、映画館でもつくろうと思っています。

 

 

英検の本当の問題点ー英語力を測る試験ではないー

 地域格差、経済格差は多くの方が、問題点を指摘してらっしゃいますので、わたしは英検の問題点について書いていきたいと思います。

 高校修了相当の英検2級を例としてあげます。英検2級と聞くと、難しそうに感じますが、実はそんなに難しくありません。その理由は一次試験の方法、スコアの換算方法にあります。一次試験は、リーディング、ライティング、リスニングの合計スコアで合否が決定します。各セクション650点で、合計1520取れれば合格です。

 英検の穴は、ライティングにあります。英検2級でも、中学2年生レベルの英文を書ければ、最低でも80%以上正答率を取ることができます。わたしの塾では、ライティングは平均90%以上、100%を取得する生徒もいます。もし、英検2級のライティングで正答率80%以下の場合、中学英語が不徹底である可能性が非常に高いので、中学1年生からしっかりとやり直した方が良いです。

 問題は、ライティングで80%以上取れた場合です。リーディング、リスニングの正答率が30%〜40%台でも合格する可能性が出てくるのです。英検2級のリーディングは、38問中20問が単語力を問う問題です。つまり、単語さえ覚えてしまえば、読解力がなくても50%以上行く可能性が高いのです。さらに、英検は4択です。リスニングも、キーワードとなる単語を追えば、正答できる問題も多いのです。

 以上のことから、多くの英検塾が、得意なセクションを伸ばし、あとは手を抜いても合格できることを知っています。

 英検は、都市の裕福なおぼっちゃんに有利な試験ではなく、都市の裕福な英語のできないおぼっちゃんにこそ、有利な試験なのです。

 

 ですので、わたしの塾では、3ヶ月の準備期間のうち、2ヶ月は中学生にも国立大学二次試験の問題を解かせ、英文法を教えています。その方が、海外留学した際に、レポートやプレゼンテーションに困らないと思うからです。

 

文科省の問題点 ーなぜ、英語民間試験を導入するのかー

 そもそも、なぜ、英語民間試験を導入するのでしょうか。2013年にこんな記事が出ています。 

www.nikkei.com

 英語民間試験の発端は、2013年の大学受験にToeflを導入する案を自民党が出したことです。そして、ある計画が発表されます。

www.sankei.com

 実は、2000年代から、アメリカへ海外留学する日本人が減少傾向にあり、それを政府が問題視していたのです。つまり、Toefl導入→アメリカ留学する人が増える、という思惑があります。

 日本人留学生の減少については、以下の資料がまとまっておりますので、ご閲覧くださいませ。http://www.kantei.go.jp/jp/singi/global/1206011matome.pdf

 では、なぜアメリカ留学を選択する日本人が減少したのでしょうか。それは、Toeflテストの難化にあります。

 それについては、太田浩先生の論文にまとまっています。引用しますと、

https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/19133/1/0101100401.pdf

2006 年、TOEFL-iBT への移行が完了し、「読む」「聞く」「話す」「書く」の 4 技能 統合型の試験となった。全体的な難易度が高まっただけでなく、日本人が得意だった文 法問題が外される一方、苦手なスピーキングが追加され、特別な準備(対策講座など) なしでは、高いスコアを取ることが困難になっている。実際、日本のスピーキングの平 均点は、世界最低であり、ライティングも最下位から 2 番目である。あわせて、英語圏 の有力大学は、交換留学生を含め志願者に求める英語力が徐々に高くなっている傾向に あり、留学したくても、要求されるスコアを満たせない学生が増えている。また、この 新 TOEFL の難しさが、英語離れ、ひいては留学離れにつながっているという指摘もある。翻って、韓国や中国などでは、着実に英語力が向上しており、日本ほど新 TOEFL の問題が深刻にはなっていない。この点からも日本の英語教育を根本的に見直す必要が あることは明らかである。

 英検などの4技能試験を導入し、Toefl受験への心理的バリアを取り除きたいとする目的が、この英語民間試験導入には隠されているのです。

 今回の英語民間試験導入の狙いは、英検の利権はもちろんあると思いますが、何よりもアメリカ政府とのつながりの中で生まれたものであると言えます。

 

 

 

 

 

 最後に、わたしは、英語民間試験導入は廃止するべきだと思います。それは、経済的・地域的格差は、もちろん、英語試験そのものの問題、そして留学生増加を目的とし国民に負担をかける政府への不信からです。

 もちろん、留学はすばらしい、しかし、留学したい人がToefl受ければいいじゃないですか。