オニテンの読書会

文化・民俗や、オススメ本の紹介、思ったことも書きます。

疲れた心を癒す、明日も頑張ろうと思える 偉人たちの自伝・随筆 7冊

 疲れた時や、自信がなくなった時、支えてくれる本があります。今回の記事では、おすすめの偉人たちの自伝・ 随筆を紹介いたします。

 文学の偉人、宗教の偉人、物理学の偉人、さまざまな偉人の思想に触れられるような本を紹介したいと思います。

 5月病、眠れない夜、通勤や通学のおともに、偉人たちの「声」はいかがですか?

【目次】

 

 

 

①大野晋

 1919‐2008年。東京深川生まれ。学習院大学名誉教授。東京大学文学部卒業。国語学者。文学博士。

日本語と私 (河出文庫)

日本語と私 (河出文庫)

 

  内容紹介

地位も身分も才能もある学友たちに比べ、自分には何もない。友が円周から中心を通って向う側へ突き進むなら、自分は円周を細々歩き続けて目標に辿り着くしかない。「日本語はどこから来たか」を尋ね続ける生き方は、その研究方法そのものだった。まだ江戸が残る子供時代の東京下町風景や、日本語の源を求めて旅した南インドの様子から、『広辞苑』基礎語千語の執筆、戦後の国字改革批判、そして孤軍奮闘した日本語タミル語同系論研究……「日本とは何か」その答えを求め、生涯を日本語の究明に賭けた稀代の国語学者の貴重な自伝的エッセイ。

 この本では、著者である大野先生の日本語への愛や、研究の楽しさを感じることができ、普段は見逃しがちな日常に潜む謎や問題点を突き詰めて考える姿勢は、日々を生きる上でとても重要であることを教えてくれます。わたしが、特に好きなのは、大野先生の出身が東京深川で、クラスメートとの「生まれ」、「育ち」の違いを感じ、学校や友人の家に足を運ぶことが、すでに「外国文化」と触れることであったという箇所でした。

 また、一つのことをコツコツと積み上げていく、研究の楽しさを感じることができ、自分の仕事も小さなことから頑張っていこうと思えます。

 

 

②Richard Phillips Feynman 

 1965年ノーベル物理学賞受賞者

 1918−1988年。アメリカ、ニューヨーク生まれ。カリフォルニア工科大学教授。理論物理学者。

"Surely You're Joking, Mr. Feynman!": Adventures of a Curious Character

 

 内容紹介

少年時代より変わらぬ,あくなき探求心といたずらっ気….20世紀を代表する物理学者が,奇想天外な話題に満ちた自らの人生をユーモアたっぷりに語る.ノーベル賞受賞をめぐる顛末,また初来日の時の“こだわり”など,愉快なエピソードのなかに,とらわれぬ発想と科学への真摯な情熱を伝える好読物.   

 わたしは、原著を英語の勉強のために読んだのですが、難解な語り口ではなく、幼少期の思い出から、研究に没頭する日々に至るまで、わかりやすい英語で書かれています。

 優秀な先生でも、こんなわんぱくな少年時代があったのか、と思い、胸がとても軽くなる気がしました。

  英語の勉強では、下のオーディオブックもおすすめです!!

Surely You're Joking, Mr. Feynman and What Do You Care What Other People Think?

Surely You're Joking, Mr. Feynman and What Do You Care What Other People Think?

 

 日本語版ももちろんあります!!

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)

  • 作者: リチャード P.ファインマン,Richard P. Feynman,大貫昌子
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2000/01/14
  • メディア: 文庫
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③ 岡潔

 1901年−1978年。大阪生まれ。京都帝国大学卒業後、フランス留学を経て、北大、なら女子大学などで教鞭をとる。多変数解析函数論の分野における超難題「三大問題」を解決し、世界に名を轟かせた。1960年、文化勲章を受賞。

春宵十話 (角川ソフィア文庫)

春宵十話 (角川ソフィア文庫)

 

 内容紹介

 数学は論理的な学問である、と私たちは感じている。然るに、著者は、大切なのは情緒であると言う。人の中心は情緒だから、それを健全に育てなければ数学もわからないのだ、と。さらに、情操を深めるために、人の成熟は遅ければ遅いほどよい、とも。幼児からの受験勉強、学級崩壊など昨今の教育問題にも本質的に応える普遍性。大数学者の人間論、待望の復刊。

 この本のには、生きるということ、数学者が何を求め生きているのか、を伝える名文が書かれています。その名文とは、

私は数学なんかをして人類にどういう利益があるのだと問う人に対しては、スミレはただスミレのように咲けば良いのであって、そのことが春の野にどのような影響があろうとなかろうと、スミレのあずかり知らないことだと答えて来た。」と述べ、「私についていえば、ただ数学を学ぶ喜びを食べて生きているというだけである。そしてのその喜びは「発見の喜び」にほかならない。」と数学者としての生き方を記してらっしゃいます。みなさんは、誰かのために役に立ちたい、組織のために自分に何ができるか、という問いに疲れていませんか?自分のしたいことや、できることを思い出させてくれる素敵な文章だと思います。

 また、「どの人がしゃべったかが大切なのであって、何をしゃべったかはそれほど大切ではない。」という言葉があります。将棋の天才であられる羽生善治さんが、まったく同じことをラジオ番組でおっしゃていました。何かを極めた人の到達した次元なのでしょう。ポストファクトの時代となった現代、「人」を見ることが最も重要なことなのかもしれないと、考えさせられる文章です。

 

 

④遠藤周作

 1923年-1996年。12歳でカトリックの洗礼を受け、慶應義塾大学卒業後、フランスのリヨン大学大学院へ留学。1955年、『白い人』で芥川賞を受賞。

落第坊主の履歴書 (日経文芸文庫)

落第坊主の履歴書 (日経文芸文庫)

 

  内容紹介

テストは0点。女子にはフラれ、神父にも叱られ、授業はサボって映画三昧。周囲も心配するほど落ちこぼれだった少年は、やがて皆に愛される作家となった。生い立ちから「作家・遠藤周作」の誕生、作家仲間との交遊録まで。狐狸庵先生が語る、涙と笑いの回顧録。 

 あんな緻密で美しい文章を書かれる遠藤周作先生に、こんな半生があったなんて、と思いました。内容は、上記の通り、少年遠藤周作の珍道中が描かれております。各エッセイが、短くまとまっていて、通学や通勤にもってこいの本となっています。

 もちろん、『沈黙』や『海と毒薬』などの純文学作品を読んだ後の方が、より面白いと思いますよ!!

 

 『最後の花時計』もおすすめです。ファンレターを送って、返信をせがむファンに苦言をていしたり、最近のテレビは面白くない!なんて、おっしゃっており、とても身近に感じられる素敵なエッセイです。

最後の花時計 (文春文庫)

最後の花時計 (文春文庫)

 

 

 

⑤酒井雄哉

 1926年−2013年。大阪府生まれ。太平洋戦争時、予科練へ志願し、特攻基地・鹿屋で終戦。戦後、職を転々とするが、うまくいかず、比叡山へあがり、40歳で得度。約7年かけて4万キロを歩く荒行「千日回峰行」を1980年、87年に二度満行する。

この世に命を授かりもうして (幻冬舎文庫)

この世に命を授かりもうして (幻冬舎文庫)

 

 内容紹介

「『生かされている』ことへの感謝を忘れてはいけない」「悪いこともいいことも、みんな自然の中にある」「縁を『結ぶ』かどうかはその人次第」「苦しいことの中に『楽』を見出す」「命の長さよりもどう生きたかが大事」。荒行・千日回峰行を二度満行した「稀代の行者」が病と向き合い、命をかけて伝えたかった「生きること」の本当の意味。新シリーズ!こころの文庫。

 ガンに冒された宗教的達人が、自身の人生を振り返り、生きることの意味、そして生き方を語っています。内容は、インタビューをもとに書かれたものになっています。そのため、酒井大阿闍梨の人柄が感じられるものとなっています。

 少年時代に、石井防疫研究所に勤めたこと、特攻基地で旅立つ仲間を見守ったこと、妻に先立たれたこと、そして仏門に入り師匠にしごかれたことなど、盛りだくさんの内容になっております。

 とくに、歩くこと、歩くことが生きることにつながるという、酒井大阿闍梨の言葉は、日々の生活で見落としがちな自然や四季の移り変わり、そしてそれによって感じることのできる生きることの楽しさを伝えています。

 また、「行き道は いずこの里の 土まんじゅう」という言葉を紹介されています。死後どうしてほしい、と考えるよりも、毎日を一生券面名に生きることの方が不安のない毎日がすごせるとおっしゃています。素敵な生き方ですね。

 

 

⑥升田幸三

 1918年−1991年。 広島生まれ。14歳で家を出て、木見金治郎名人に入門。1952年王将位獲得。1956年、大山康晴名人に対し「名人に香車を引いて勝つ」という史上空前の記録を残す。史上初の三冠を達成。

 

勝負 (中公文庫)

勝負 (中公文庫)

 

  内容紹介

不世出の棋士が遺した人生を戦いぬく黄金律。少年時代、駒の哲学、勝負、上に立つ、後から来る者へ、思い出の人々、身辺雑記などのテーマで語る。1970年サンケイ新聞社刊の再刊。

 勝負師が、如何なる思想を持ち、生きてきたのか、そして、その思想は、わたしたちの生活に活かせるものなのか、考えさせられる内容になっています。

 わたしがこの本を読んで、感銘を受けたのは、「勝負師」と「賭博師」の違いについて述べている箇所でした。

 賭博師が一か八かやけっぱちで賭け、一回でおしまい、となるのに対し、勝負師は、勝負を決してあきらめることなく、とにかく生ある限り抵抗し、挽回をはかる人のことだそうです。

 勝負師、憧れますね。将棋に興味がない、ビジネスに活かせる感性がほしい、という方におすすめな本です。

 

 ちなみに、自伝も出版されております。 

名人に香車を引いた男―升田幸三自伝 (中公文庫)

名人に香車を引いた男―升田幸三自伝 (中公文庫)

 

 

 

⑦手塚治虫

 1928年ー1989年。大阪府豊中市に生まれ、兵庫県宝塚市で育つ。大阪大学付属医学専門部を卒業後、医学博士号取得。1946年、「マアチャンの日記帳」で漫画家デビュー。1962年には『ある街角の物語』でアニメーション作家としてもデビュー。

紙の砦

紙の砦

 

  内容紹介

太平洋戦争の末期、戦火にさらされた大阪の町で、すきっ腹をかかえながら好きな漫画の道にうちこむ一人の少年がいた……。表題作「紙の砦」他、巨匠手塚治虫が青春時代の思い出を綴った6編を収録して贈る自伝的作品集!

 言わずと知れた「漫画の神様」であられる、手塚治虫の漫画家前夜の生活を知ることができる自伝的漫画となっています。戦時中、そして戦後に、漫画家を目指した少年が、どのように過ごしたのかが、描かれており、夢を追うこと、そして、熱中することのすばらしさに、気付かされます。あと、少しばかりの女性との恋愛(らしき)ものも描かれています。恋と漫画、夢を追う人間の恋愛事情もうかがい知ることができるのです。 

 表題作の「紙の砦」も面白いのですが、トキワ荘の目線で描かれている「トキワ荘物語」がなんだか、もの寂しく、胸に響く作品となっています。

 

 

 

 

 みなさんは、どんな作品を読んで、心を奮い立たせたり、癒したりしてらっしゃいますか。今回は、わたしの好きな作品を紹介させていただきました。