オニテンの読書会

文化・民俗や、オススメ本の紹介、思ったことも書きます。

Amazonで1円で買える おすすめ小説 5選をご紹介ー犬、愛、刀、病、空想ー

 今回の記事では、わたしが読んで「面白かった!!」と思った小説を5冊、みなさんに紹介したいと思います!

 【目次】

 

 しかも、Amazonで、なんと1円から購入可能です(中古、Kindle。2017年4月4日現在)。暇があれば、ぜひ読んでいただきたい小説となっています。

 

①古川日出男 『ベルカ、吠えないのか?』

ベルカ、吠えないのか? (文春文庫)

ベルカ、吠えないのか? (文春文庫)

 

 「犬」をテーマに、戦争、紛争の近代史を辿る物語。とある犬を始祖として、繁殖を繰り返し、海を越え、国をまたいで、犬が活躍する「血筋」の物語です。

 文体は、とても男っぽい、ハードボイルドな感じです。 それでいて、神話を読んでいいるような壮大さがあります。

 犬版のマッドマックス的なものを感じました!

 

②井上靖 『愛』

愛 (角川文庫)

愛 (角川文庫)

 

  「愛」にまつわる短編を三つまとめたものです。その中でも、わたしのおすすめは、「結婚記念日」という短編です。内容は、「妻を亡くして二年。後妻の話があるものの、一生独り身を決めている三七歳の春吉が、亡き妻との旅の想い出を辿る」というものです。

 愛というものは、素朴でいて、近くにあり、そしていて、主張しないものであると、考えさせられた素敵な物語です。

 

③山本兼一 『いっしん虎徹』

いっしん虎徹 (文春文庫)

いっしん虎徹 (文春文庫)

 

  「刀」をテーマにした小説です。表題にある通り、名刀「虎徹」を作り上げるまでの物語です。もともとは、防具を作っていた鍛治が、自分の作った兜を叩き切る刀を作る、という目標のもと、努力を続けます。しかし、度重なる障害、妨害が!!

 刀鍛冶版、下町ロケットのような感じでしょうか。

 わたしとしては、試し切りについての描写が、とても面白かったです。刀剣や、職人文化に興味がある方は、おすすめです!

 

④北條民雄 『いのちの初夜』

いのちの初夜

いのちの初夜

 

  「ハンセン氏病」に冒された著者の私小説です。ハンセン氏病と診断され、隔離された病院に入ることになります。そこで、病に苦しむ患者たちと出会い、自分の人生、行く末を思うのです。24歳で亡くなった著者の魂の小説となっています。

 病に対する差別、偏見を考える機会をあたえてくれる小説です。ぜひ、中学校や高校の教科書に掲載されて欲しいと思います。

 この素晴らしい小説が、AmazonのKindleで、0円です。もう、読まない理由はありません。

 

⑤本田誠 『空色パンデミック』

空色パンデミック1 (ファミ通文庫)

空色パンデミック1 (ファミ通文庫)

 

  「空想」をテーマにした物語です。ライトノベルですが、とても文体も読みやすいと思います。ただ、内容が内容なのです。あらすじを読みますと、

見つけたわよ、ピエロ・ザ・リッパー! ジャスティスの仇、とらせてもらうわ!」「……はい?」高校受験の日、駅のホームで、僕、仲西景は結衣さんと出逢った。彼女は“空想病”。発作を起こすと、正義の使者とかになりきってしまう。空想病にもいろいろあって、もし“劇場型”なら、他人に空想を感染させ、世界を滅ぼしかけたこともある危険な存在。だけど結衣さんは通常の“自己完結型”。そんな彼女に、なぜかつきまとわれる日々が始まった。発作を起こしていないときの彼女は、端的に言ってただのわがまま娘。空騒ぎに付き合ってられない。最初は、そう思っていた。――でも、それだけではなかった。

空色パンデミック1 (ファミ通文庫)

 ちょっと、複雑な内容であるようにも見えますが、実は、いたって簡単な物語です。とくに、後半の謎、展開の畳み掛けは、お見事です。普段はライトノベルを読まないかたも、おすすめです。

 

  春が訪れ、新生活を迎え、慌ただしい毎日を送ってらっしゃるかたも多いかと思いますが、小説を読んで、気分を紛らわすのも良いですよ。

 

おすすめの小説 早見和真 『ひゃくはち』 野球をめぐる少年たちの物語

 みなさんは、早見和真さんの『ひゃくはち』を読んだことがありますか?この作品は、野球の強豪校で、レギュラーを目指す(目指した)少年の物語です。わたしは、高校野球を見るたびに、この小説を思い出します。

 

 早見和真著『ひゃくはち』のあらすじ

地方への転勤辞令が出た青野雅人は、恋人の佐知子から意外なことを打ち明けられた。付き合い出すずっと前、高校生のときに二人は出会っていたという。彼は、甲子園の常連・京浜高校の補欠野球部員だった。記憶を辿るうち――野球漬けの毎日、試合の数々、楽しかった日々、いくつかの合コン、ある事件、そして訣別。封印したはずの過去が甦る。青春スポーツ小説に新風を注いだ渾身のデビュー作。

ひゃくはち (集英社文庫)

 

 もう、大方のあらすじが分かってしまいましたが、わたしなりのおすすめポイントをご紹介したいと思います😊

 

強豪校とは、何かを知る

 まず、この物語の主人公は、レギュラー(スタメン)ではなく、補欠なのです。みなさんの中には、「なんだ、補欠か」とお思いの方も多くいらっしゃるかもしれませんが、強豪校では、補欠になることも、難しいのです。 

 わたしの経験をお話しいたしますと、わたしの高校時代の部活(剣道部)では、部員50名のうち、レギュラーは5名、そして補欠が2名でした。1軍から6軍まであり、部内の競争の方が、正直、地域の大会よりも大変でした。

 こうした強豪校には、才能を見出され越境入学してくる子や、夢を抱いて実績がなくても挑戦する子が集まってきます。毎日、毎日、文字通り血反吐を吐きながら、練習に明け暮れることになるのです。

 この『ひゃくはち』では、主人公の「補欠」という目線から、強豪校の日常に迫ります。きつい練習、たまの休みで羽を伸ばしたり、レギュラーになれるのかを指折り数えたり、と、リアルな「高校生」が描かれているように思えます。

 

指折り数えた自分の「枠」

 この『ひゃくはち』のすごいところは、試合が物語の中心にない、ということです。強豪校内の特異な人間関係、高校生というよりも、むしろ「実社会」に近い、人間関係を物語の中心として、描いているのです。

 この中でも、わたしが面白いと思ったポイントは、補欠の主人公が、自分の「枠」を計算し続けることです。この自分の「枠」を計算するという行為は、選手の個性や能力を比較し、監督の癖を読み、自分がスタメンや補欠として選ばれるかどうか、を検討することになります。

 わたし自身も、この「枠」をかなり、計算したタイプなので、読んだとき、「あぁ。わかる!」と、大きくうなずいてしまいました。

 強豪校では、人の目を引くほどの才能や実績がなければ、監督に名前を覚えてもらえない、ということも当たり前です。どこまで、自分を「売れるか」という、自己演出まで、描いた野球小説はなかなか無いのではないでしょうか?

 

夢のあと(後、跡) 大人になって出会う高校時代の自分

 物語は、ある事件を描いた後に、高校時代から、社会人へと話が進みます。この社会人時代では、高校時代の自分を、もう一度見つめなおすことになるのです。高校時代の自分たちを思い出すときに、恥ずかしくなったり、誇らしくなったり、と人それぞれであるとは思います。

 高校時代、青春時代とは、感情だけでなく、自分の能力や才能までも「むきだし」になる、そんな時代であると思います。その時に、起きた出来事を、今、大人になった自分が如何に見つめ、今に活かすのか、というテーマが、この物語には、あるようにも思います。

 

 現在、春の選抜が始まり、熱戦が繰り広げられています。この小説とともに、楽しく観戦されては如何でしょうか?

 

 

ひゃくはち (集英社文庫)

ひゃくはち (集英社文庫)

 

 

映画化もされています

 

ひゃくはち プレミアム・エディション [DVD]

ひゃくはち プレミアム・エディション [DVD]

 

 

青春時代を見つめ直すというテーマでは、津原泰水「ブラバン」も、おすすめです!!

 

ブラバン (新潮文庫)

ブラバン (新潮文庫)

 

 

 

 

山本さほ『岡崎に捧ぐ』をすすめたい。 Dedicated to Okazaki-san 

 みなさんは、『岡崎に捧ぐ』というマンガを御存知でしょうか?

 

気の抜けたタッチで描かれる作者の学生時代の思い出を描いた作品です。

絵が可愛らしくて、やわらかく、読んでいて笑い、気づけば泣いてしまっていました。

 正直、どこで胸に刺さったのか、涙腺が刺激されたのか、わかりませんでしたが、作品の作り出す雰囲気、作品全体が、思い出や友情、家庭環境などを精緻に描くことによって、読者の琴線に触れるようになっているのでしょう。

 

 ここまで、「泣ける」作品のおすすめ記事みたいになってしまいましたが、『岡崎に捧ぐ』は、れっきとしたコメディ、ギャグマンガです😊

考えてみれば『岡崎に捧ぐ』というタイトルも、ふざけてるw?と思います😊

 

岡崎に捧ぐ(1) (コミックス単行本)

岡崎に捧ぐ(1) (コミックス単行本)

 

 

 作品は、大人になった主人公と友人の岡崎さんが、駅の改札口で別れるところからはじまります。そして、岡崎さんと主人公である作者が出会う、小学校時代にさかのぼるのです。

岡崎さんは、若干ネグレクト気味の女の子、内気で健気なメガネ女子です。

私(主人公)は、能天気で、ゲーム好きで、ゲームし放題の岡崎さんの家に入り浸ることになります。

 

ここで、わたしが考える『岡崎に捧ぐ』のオススメポイントをご紹介いたします。

 

あの頃、青春とはゲームだった。80's生まれの子ども時代

 この作品の作者である山本さほさんは、おそらく、30台前半であると思います。わたしも同世代なので、彼女の青春時代に共感することが多くありました。とくに、小学校時代の思い出に登場するゲーム機の数々は、わたし自身も遊んだ経験のあるものがあり、とても懐かしい気持ちになりました。たまごっちや、ゲームボーイの出現、そして急激に進むゲームの発展に、驚きながらも食らいつこうとしていた子ども時代を思い出しますww

 こうした1990年代のゲームを描いた作品として、押切蓮介『ハイスコアガール』がありますが、『ハイスコアガール』が主に男の子目線で、ゲームセンターを舞台にした作品であるのに対して、この『岡崎に捧ぐ』は女の子の目線から、家庭ゲーム機を扱った作品になります。おおよそ同じ時代背景になるので、合わせて読んでも面白いです。

ハイスコアガール CONTINUE(1) (ビッグガンガンコミックススーパー)

ハイスコアガール CONTINUE(1) (ビッグガンガンコミックススーパー)

 

 

胸にくる心理描写

 学生時代の何気ない日常を描いたものであるのにもかかわらず、この作品が胸を締め付ける要因には、精緻な心理描写があります。少しネタバレになりますが、いつもは、自分からやりたいことを言わず、主人公の意に沿う形で過ごそうとする岡崎さんが、突然、剣道をやりたいというシーンがあります。彼女が、自信なさげに道場を覗き込み、剣道にふれ、友人である主人公に剣道をやりたいと告げる描写は、それまでの岡崎さんの性格を知っている主人公の、そして読者の心に刺さります。

 ただ、剣道をしたいというだけのシーンで、ここまでグッときたのは、とても不思議な気持ちでしたが、これは何気ない日常にある心の動きを精緻に描く作者の力量がなせるワザであるとおもいます。 

岡崎に捧ぐ(2) (コミックス単行本)

岡崎に捧ぐ(2) (コミックス単行本)

 

 

日常に潜むギャグ

 これまでは、『岡崎に捧ぐ』の素敵な部分をクローズアップしてきましたが、実はとても良くできたギャグマンガなのです。しかも、だいそれたギャグなどでなく、日常にそっとあるような面白いこと、子ども時代の妄想など、思わず「あるある」といってしまいそうなことばかりです。

 そうした日常に散りばめられたギャグが、岡崎さんの家庭環境や、受験などといったシリアスな問題とのコントラストとなって、前述したような読者の琴線にふれる作品となっているのだと思います。ギャグについて書きたいことは山程ありますが、ネタバレになってしまいそうなので、それは是非作品を読んで笑っていただきたいとおもいます。

 

 岡崎さん 幼馴染という稀有な存在

 この作品のタイトルにもなっている岡崎さんは、作者にとって唯一無二な友人です。しかし、そんな友人だけれども、育ってきた環境や、性格が違いから、理解ができないこともあるものです。

 この作品の始まりは、大人になった岡崎さんと駅の改札口で別れるシーンから始まります。このシーンで、「また明日」という笑顔の岡崎さんに対して、主人公は「今日は家で飲もう」とひとりごちます。主人公の気持ちを思いますと、親友・幼馴染でありながらも、完全には理解し得ない、掌握することのできない、そして自分との差異のなかにあるということからくる、寂しななのかなぁ、と考えてしまいます。

 こうした岡崎さんという存在を通して、自分を作り出していく主人公の姿は、わたし達が大人になる過程における友人という大切な存在との融和と葛藤を思わせるのです。

 

みなさんは、幼馴染はいますか。その人のことを思いながらよむことをオススメしたいです。

 

 この日常を描いたマンガでは、この『サトコとナダ』もオススメです!!

www.oniten-yomu-book.com

 

 

ツチヤタカユキ『笑いのカイブツ』を読んで。 思索する読書へ④

笑いの神へ問い続けた煩悶の日々、ハガキ職人版『沈黙ーサイレンスー』

 現在、2月19日深夜、ラジオリスナーにとって、特別な夜でしたね。寝不足の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?。

 ハガキ職人、その存在は、とても不思議です。ラジオ番組には欠かせない存在で、顔も職業もわからない、ラジオリスナーにとっては大切な「仲間」です。気づけば、番組のMCのお笑い芸人をも魅了する(笑わせる)存在。でも、素人。

 わたしも、「爆笑問題カーボーイ」でネタを読まれた経験があるのですが、痺れるほど嬉しかったことを思い出します。太田さんに読まれたことだけでなく、憧れのハガキ職人さんと一緒に番組を彩ることができたことに震えました。

 今日ご紹介する本、『笑いのカイブツ』の著者ツチヤタカユキさんは、あの「ケータイ大喜利」のレジェンド、多くのラジオ番組で活躍されたハガキ職人さんです。

 

笑いのカイブツ

笑いのカイブツ

 

 

内容(若干のネタバレを含みます)

 27歳、無職、童貞(?)の伝説のハガキ職人ツチヤタカユキの私小説。高校1年生の時に出会った「ケータイ大喜利」のレジェンドを目指す。1日に500個のネタを作り続ける日々を送り、19歳の時に初めて「ケータイ大喜利」にネタ採用。その後、半年間ネタが不採用となり、1日のノルマを1000個に。ネタが採用されるようになると、ノルマは2000個に増加していく。21歳で、レジェンドに。

 21歳で、吉本の劇場作家になるも、笑いを第一としない他の構成作家に嫌気がさし、人間関係が不和に、そして三ヶ月で退職。その後は、ハガキ職人としてラジオ番組に投稿を始める。「とある番組」で、300のネタが採用されたころ、「あのひと」から誘いにより、24歳で上京する。しかし、ここでも挫折を経験し、地元に帰ることに。。。

 

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プチ鹿島『教養としてのプロレス』から、『私にとっての剣道』  思索する読書へ③

 プチ鹿島さんの著書『教養としてのプロレス』は、名著だと思う。なぜなら、彼自身の思い出と反省が、「プロレス」という単語に集約されているからだ。

 

 『教養としてのプロレス』の内容は、以下の通りです。

「プロレスを見ることは、生きる知恵を学ぶことである」―。著者が30年以上に及ぶプロレス観戦から学びとった人生を歩むための教養を、余すところなく披瀝。今もっとも注目すべき文系芸人による初の新書登場。90年代黄金期の週刊プロレスや、I編集長時代の週刊ファイトなどの“活字プロレス”を存分に浴びた著者による、“プロレス脳”を開花させるための超実践的思想書。『教養としてのプロレス』

 

 プチ鹿島さんは、プロレスから生きる知恵を学んだといいます。物事が常に多面性をもっていること、情報に対してのリテラシーなどを、プロレスに学んだのだと。

 私自身、プロレスには全くと言っていいほど、詳しく無いのですが、少年期から青年期にかけて熱中したものが、その人のモノの捉え方、考え方を左右することは、理解しています。

 プチ鹿島さんにとって、それが、プロレスであるのでしょう。この本では、プロレスの歴史、そしてそれをファンとして、ときに無我夢中に、ときに冷静に傍観したプチ鹿島さん自身の体験が書かれているのです。

 とくに、私の心に残った箇所があります。それは、メガネスーパーがプロレス界に参入し、新団体を旗揚げした際に、プロレス雑誌が「金権プロレス」と糾弾し、メガネスーパーは数年で撤退したのですが、しかし、糾弾した雑誌メディアそのものが他団体から金をもらっていた、というものです。

 メディア自体を疑う目をもつこと、それは、Post-Truth,Post-Factといわれる現在において、最も必要な素養であると思います。

 また、プロレスファンが、B層であるとの指摘は、アメリカにおけるトランプ政権の誕生を予感される内容となっていることも、この本の特徴となっています。

 

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岡潔『春宵十話』から、 「『役に立つ』と私」思索する読書へ② 

 みなさんは、何のために生きていますか?単細胞な私でも、ときどき悩んでしまうくらいなので、多くの方が「生きる」ことに悩んでいるのではないでしょうか。

 私が、落ち込んだ時、思い出す言葉があります。それは、高名な数学者である岡潔さんの言葉です。

私は数学なんかをして人類にどういう利益があるのだと問う人に対しては、スミレはただスミレのように咲けば良いのであって、そのことが春の野にどのような影響があろうとなかろうと、スミレのあずかり知らないことだと答えて来た。

私について言えば、ただ数学を学ぶ喜びを食べていきているというだけである。そしてその喜びは「発見の喜び」に他ならない。
(岡潔『春宵十話』)

  こんな素敵な言葉は、そうで会えるものではないと思います。私は、落ち込んだ時、この言葉を思い出しています。

 

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江戸川乱歩『芋虫』から、『ぐちゃぐちゃと結婚』思索する読書へ① 

江戸川乱歩『芋虫』を読みました。物語のあらすじは、

時子の夫は、奇跡的に命が助かった元軍人。両手両足を失い、聞くことも話すことができず、風呂敷包みから傷痕だらけの顔だけ出したようないでたちだ。外では献身的な妻を演じながら、時子は夫を“無力な生きもの”として扱い、弄んでいた。ある夜、夫を見ているうちに、時子は秘めた暗い感情を爆発させ…。芋虫 江戸川乱歩ベストセレクション2 (角川ホラー文庫)

というもので、話の構造は、いたってシンプルですが、文章表現も美しく読まされてしまいます。この物語で、私が考えたこと、それは、女性と男性のコントラスト、そして私自身の思い出です。

 江戸川乱歩の作品を読んで強く感じたことは、《肉として女性、物としての男性》という性描写です。

 

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